読んだ本
訳者あとがきによると、英国での「読んだふり本」第一位がこの作品らしい。
概要
1949年に書かれた作品。舞台は全体主義のような超監視社会で、ビィストピア。世界では3つの大国が常に戦争をしているという。主人公は中年男性で、「真理省」に勤める所謂会社員。
〈ビッグ・ブラザー〉と、党が完全に社会をコントロールしており、大衆が支配者に熱狂するようメディアの改竄が徹底して行われている。個人情報もくそもない。そんな社会と大衆を、主人公は懐疑的に、冷めた目で見ているが…この男の運命やいかに
かんそう
近未来を描いた作品であるが、近未来作品の常套である「豊かな明るい美しい未来」というものは一切描かれていない。街は薄汚れ、人々は飢えている。後半の生々しさは壮絶で唖然とした。読み終わると、自分が見ているものを信じたくなくなる。現実、裏切り、苦痛…何も知っていない自分という現実を突きつけられ、なんとも言えない気持ちになる程の力をもっている。フィクションなのに。
古典と聞いたから読んだけれど、後半が凄まじい。
話がそれるけれど、あるシーンが『東京喰種』という漫画にそっくりだなーと思ったりした。気のせいかな…
以下刺さった言葉を引用する
「我々の社会では、現実に起こっていることを最もよく知悉している人々がまた、世界をありのままに見ることができない人々でもある。一般に、理解力が深くなればなるほど、迷妄も深まるものだ。」
(過去の改変に関して)「彼は祖先よりも恵まれた生活を送っており、物質的な快適さの平均水準も絶えず上がり続けていると信じる必要があるからだ。」
「我々の時代を特徴づける全ての信念、慣習、嗜好、感情、心的態度は、(中略)今日の社会の真の性質が見抜かれることを防ぐ為に構想された。」
なんだか、どこぞの国を連想せざるをえないぞ??
「ウィンストンは疲労のあまりゼリーにでもなったようだった。まさにゼリー状と言うしかない。」
「自己防衛的愚鈍」
長くなるからこの辺にする。
参考文献
ジャージ・オーウェル『一九八四年[新訳版]』高橋和久訳 ハヤカワepi文庫
20201003